【大学職員が語る】「大学、辞めたい…」その前に。休学・退学・除籍の違いと、後悔しないための選択肢

大学生活の教科書

「もう、大学に行く意味がわからない…」
「これ以上、親に学費を払わせるのが申し訳ない…」

そんな風に、「大学を辞める」という選択肢が頭をよぎっていませんか?

こんにちは、大学職員のシュウです。私の専門は履修や成績などを扱う教務課ですが、毎年「退学届」を提出しに来る学生に、必ず出会います。その決断に至るまで、一人でどれほど悩み、苦しんだかを想像すると、いつも胸が痛みます。

しかし、それ以上に私が心を痛めるのは、学生が「休学」という、未来の可能性を残すための重要な選択肢を知らないまま、あるいは誤解したまま、「退学」という後戻りできない決断を下してしまうことです。

「辞める」という決断を下す前に、ほんの少しだけ時間をください。この記事では、あなたの人生を守るためのセーフティネットである「休学」、最終手段である「退学」、そして大学側から籍を抹消される「除籍」、さらにあまり知られていない「第3の選択肢」について、大学職員の視点から徹底的に解説します。

読み終える頃には、あなたは冷静さを取り戻し、自分にとって本当に最善な道は何かを判断するための、正確な知識を手にしているはずです。

そもそも「休学」「退学」「除籍」はどう違うのか?

まず、この3つの言葉の制度上の決定的な違いを理解しましょう。

  • 「休学」とは: 大学に籍を置いたまま、一時的に休む「戦略的タイムアウト」です。
  • 「退学」とは: 自らの意思で大学との契約を終了させ、学生の身分を失う「リセットボタン」です。
  • 「除籍」とは: 大学側の判断で学籍を抹消される「強制終了」です。主に学費の長期未納や在学年限の超過が原因となります。
比較項目休学退学(中途退学)除籍
意思の主体学生本人学生本人大学側
大学との関係在籍したまま在籍しなくなる在籍しなくなる
復学可能(保証されている)不可(再入学・編入試験が必要)不可(再入学試験が必要な場合が多い)
最終学歴〇〇大学 在学〇〇大学 中途退学〇〇大学 中途退学(※)

※履歴書には「中途退学」と記載できる場合が多いですが、企業から証明書の提出を求められた際に不利になる可能性も指摘されています。

「休学」という“戦略的タイムアウト”を深掘りする

「休学」は、決してネガティブな選択ではありません。未来のために、一度立ち止まるための積極的な制度です。

どんな理由で休学できる?

経済的理由、病気・怪我による療養、海外留学など様々な理由が認められますが、実は、文部科学省の調査によると、休学理由で最も多いのは「心身耗弱・疾患」で全体の33.0%を占めています。あなたがもし心身の不調で悩んでいるなら、それは決して特別なことではないのです。

【最重要】お金の話。休学中の学費と「在籍料」

「休学=無料」ではないことを、まず理解しましょう。費用は大学の設置形態によって大きく異なります。

  • 国立大学: 授業料が全額免除され、在籍料もかからないのが一般的です。
  • 私立大学: 約8割の大学が何らかの費用を徴収しています。授業料は免除・減額されても、学籍を維持するための「在籍料」や施設設備費の一部として、年間数万円〜十数万円程度(10万円未満が最も多い)の費用がかかる場合があります。

詳細は必ず大学の事務室に確認してください。

「退学」の前に検討すべき、入学金だけじゃない“第3の選択肢”

「今の環境が合わない」と感じている場合、「辞めて再受験」する以外の道が大学内に用意されているかもしれません。ただし、これらの選択肢にも費用やリスクが伴います。

選択肢①:転学部・転学科(今の大学内で移籍)

今の専門分野への興味を失ってしまった場合、学内で別の学部・学科へ移籍できる制度です。入学金を再度支払う必要はない場合が多いですが、出願時に30,000円~35,000円程度の「検定料」が必要になるのが一般的です。また、文系から理系へ移る場合など、授業料が上がる可能性も考慮しましょう。

選択肢②:通信制課程への転籍(学び方を変える)

対面授業や人間関係が負担な場合、同じ大学の通信制課程へ転籍できる場合があります。学費は通学課程より抑えられますが、「入学金不要」は誤解です。慶應義塾大学で30,000円、早稲田大学では200,000円の入学金が設定されています。

【最重要リスク】
通信制大学の平均卒業率は10%~14%程度と、通学制(80%以上)に比べて著しく低いのが現実です。高い自己管理能力がなければ、安易に飛びつくのは危険です。

選択肢③:系列大学への「転入学」

もしあなたの大学が大きな学校法人(例:日本大学、東海大学、帝京大学グループなど)の一部である場合、同じ学園内の別の大学へ移籍できる「転入学」制度が存在することがあります。ただし、これは普遍的な制度ではなく、入学金が免除されるかも大学の規定によります。

「退学」という決断の前に知っておくべきこと

上記の選択肢を検討してもなお、「退学」を選ぶ場合の現実についてお話しします。

退学手続きのリアル

学生証の返却など事務的な手続きが必要です。多くの場合、指導教員や保証人(親)との面談が必須となります。
この手続きを怠り、学費を納めないまま放置すると、大学側の判断で「除籍」処分となる可能性がありますので、必ず正式な手続きを踏んでください。

退学・除籍がもたらす影響

  • 学歴: 最終学歴が「大学中退」になります。
  • 再入学: 一度退学した後でも、再度入学試験を受けることで学び直す道はあります。

結論、まずあなたがすべきは「相談」というアクション

どんな決断を下すにせよ、一人で抱え込まず、まずは大学に相談してください。

誰に、何を相談すればいい?

問題の種類によって、頼るべき専門家がいます。

  • 第一歩:指導教員・ゼミの先生: 最も身近な相談相手です。
  • 手続きと規則の専門家:学部・学科の事務室(教務課): ここで休学・退学・除籍の違いや、転学部などの手続き、費用について正確な情報を得られます。
  • 心の専門家:学生相談室・カウンセリングセンター: 根本的な悩みの解決をサポートしてくれます。
  • 将来の専門家:キャリアセンター・就職課: 「大学中退」という経歴での就職活動や、その後のキャリアについて具体的なアドバイスをもらえます。

親への伝え方

「辞めたい」と感情的に伝えるのではなく、「休学して考えたい」「転学部という道もあるらしいが、検定料がかかるようだ」と、この記事で得た知識を元に、論理的に建設的な提案をすることが、無用な衝突を避ける鍵です。

まとめ

  • 「休学」は在籍したままの休み、「退学」は自己都合で辞めること、「除籍」は大学に籍を抹消されること。
  • 休学中は私立大学だと「在籍料」がかかることが多い。
  • 環境を変える道として「転学部」「通信制への転籍」「系列大学への転入学」があるが、それぞれに費用やリスク(特に通信制の卒業率の低さ)がある。
  • どんな決断を下すにせよ、最初の行動は「大学への相談」である。

あなたが今抱えている悩みは、決してあなた一人だけのものではありません。大学には、あなたをサポートするための専門家がたくさんいます。

今すぐ退学届を出す必要はありません。まずは、あなたの大学の公式サイトで「学則」や「履修要覧」を開き、「休学」や「転学部」に関する項目を読んでみることから始めてみませんか?

正確な情報を知ることが、あなたを不要な焦りや絶望から救う、最初の光になります。


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