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退職金は、受取額の全額にそのまま税率を掛けるわけではありません。勤続年数に応じた退職所得控除を差し引き、原則として残額の2分の1を課税対象にして、給与などとは分けて所得税・住民税を計算します。
先に結論:勤務先へ「退職所得の受給に関する申告書」を提出していれば、通常は退職金の支給時に所得税等と住民税が差し引かれ、退職金だけを理由とする確定申告は原則不要です。未提出の場合は、退職金の支払額から所得税等が一律20.42%源泉徴収されるため、確定申告での精算を確認します。
情報確認日:2026年10月4日
この記事は一般的な居住者・会社員の退職金を扱います。同じ年に複数の退職金を受ける場合、過去の退職金や企業年金・iDeCo一時金がある場合、勤続5年以下、役員等、障害退職では計算が変わることがあります。源泉徴収票と支払者の計算を確認してください。
退職金にかかる税金の基本
退職金は長年の勤務に対して一時に支払われる性質があるため、給与と同じ方法ではなく「退職所得」として原則分離課税されます。勤務先は通常、支給時に所得税・復興特別所得税と個人住民税を差し引きます。
累進税率で計算
課税退職所得金額に5~45%の税率を適用し、2026年分は所得税額に復興特別所得税を加えます。
原則合計10%
課税退職所得金額に区市町村民税6%と都道府県民税4%を掛け、通常は支給時に特別徴収されます。
「退職後の給与住民税」とは別です。
退職金そのものにかかる住民税と、給与から引き切れなかった前年所得分の住民税は別に計算されます。後者は退職後の住民税の払い方で確認できます。
退職所得控除の計算方法
| 勤続年数 | 退職所得控除額 | 例 |
|---|---|---|
| 20年以下 | 40万円×勤続年数 最低80万円 |
勤続10年なら400万円 |
| 20年超 | 800万円+70万円×(勤続年数-20年) | 勤続30年なら1,500万円 |
勤続期間に1年未満の端数があるときは、1年に切り上げます。たとえば10年2か月なら勤続年数は11年となり、控除額は440万円です。障害者になったことが直接の原因で退職した場合は、通常の控除額に100万円を加えます。
前年以前に退職金を受け取った場合や、同じ年に2か所以上から退職金を受け取る場合などは、勤続期間の重複調整により控除額が変わることがあります。各支払者へ過去・同年の受給状況を正しく伝えます。
一般的な退職金の計算手順
課税退職所得金額 =(退職金の収入金額-退職所得控除額)×1/2
- 勤続年数を1年未満切上げで求める
- 勤続年数から退職所得控除額を計算する
- 退職金から控除額を差し引く
- 原則として残額を2分の1にする
- 1,000円未満を切り捨てた課税退職所得金額へ所得税率と住民税率を適用する
退職金が退職所得控除額以下なら、一般的なケースでは課税退職所得金額は0円です。ただし、複数受給や勤続期間の重複がある場合は単独の金額だけで決めないでください。
具体例で見る退職金の税金
勤続10年・退職金300万円
- 退職所得控除:40万円×10年=400万円
- 退職金300万円-控除400万円=0円以下
- 課税退職所得金額:0円
ほかの退職金や重複期間がない一般的な前提では、退職金に対する所得税等・住民税はかかりません。
勤続20年・退職金1,000万円
- 退職所得控除:40万円×20年=800万円
- 課税退職所得金額:(1,000万円-800万円)×1/2=100万円
- 所得税等:100万円×5%×1.021=51,050円
- 住民税:100万円×10%=100,000円
- 税額合計の目安:151,050円
勤続30年・退職金1,600万円
- 退職所得控除:800万円+70万円×10年=1,500万円
- 課税退職所得金額:(1,600万円-1,500万円)×1/2=50万円
- 所得税等:50万円×5%×1.021=25,525円
- 住民税:50万円×10%=50,000円
- 税額合計の目安:75,525円
例は一般退職手当等を1か所から受け取り、特殊な勤続期間や税額調整がない前提です。実際の源泉徴収では端数処理があります。
勤続5年以下は2分の1課税に例外がある
役員等以外でも、勤続年数が5年以下の退職手当等は「短期退職手当等」に該当することがあります。退職金から退職所得控除額を差し引いた残額が300万円を超える場合、その超える部分には2分の1課税を適用しません。
控除後残額が300万円以下
(収入金額-退職所得控除額)×1/2
控除後残額が300万円超
150万円+{収入金額-(300万円+退職所得控除額)}
国税庁の例では、使用人として4年2か月勤務し、退職金800万円、控除額200万円の場合、退職所得は450万円です。単純に残額600万円を2分の1にした300万円ではありません。
役員等としての勤続年数が5年以下の「特定役員退職手当等」は、対応する退職金について2分の1計算そのものが適用されません。該当可能性がある場合は会社の担当者または税務署へ確認してください。
退職所得申告書はいつ・どこへ出す?
「退職所得の受給に関する申告書」は、退職金の支払を受ける時までに、退職金を支払う勤務先等へ提出します。税務署へ自分で直接提出する書類ではなく、支払者が保管します。会社から案内された様式と提出期限を確認してください。
- 氏名・住所・個人番号などを記入する
- 勤続期間と退職日を確認する
- 同じ年に先に受け取った退職金があれば源泉徴収票等を添えて申告する
- 前年以前の退職金や企業年金・iDeCo一時金がある場合は支払者へ伝える
- 提出後は退職所得の源泉徴収票を保管する
申告書を出していない場合は確定申告を確認
申告書を提出していない場合、退職金の支払額に一律20.42%を掛けた所得税等が源泉徴収されます。勤続年数に応じた控除を反映した本来の税額より多く引かれていることがあるため、確定申告で精算します。
申告書を提出済みなら、通常は支給時の源泉徴収で課税関係が終了し、退職金だけを理由に確定申告する必要はありません。ただし、医療費控除や寄附金控除など別の理由で確定申告書を提出する場合は、退職所得の金額も記載します。詳しくは退職した年の確定申告を確認してください。
受取時に確認するチェックリスト
- 退職所得申告書を勤務先へ提出した
- 勤続年数が1年未満切上げで記載されている
- 退職所得控除額と課税退職所得金額を確認した
- 所得税等と住民税が別々に記載されている
- 退職所得の源泉徴収票を受け取り保管した
- 複数の退職金・企業年金・iDeCo一時金がある場合は個別計算を確認した
公式情報・確認先
制度コンパスは官公庁等の公式サイトではありません。源泉徴収票の金額と勤務先の計算を確認し、複数受給や特殊な勤続期間がある場合は税務署・自治体・税理士へ確認してください。