会社員は、勤務先で年末調整が済めば、原則として自分で確定申告をする必要はありません。ただし、給与収入が2,000万円を超える場合や、副業などの所得が20万円を超える場合、2か所以上から給与を受け取っている場合などは、確定申告が必要になることがあります。
先に結論
- 勤務先が1社で年末調整が完了し、給与以外の所得が20万円以下なら、所得税の確定申告は原則不要です。
- ただし、医療費控除などのために確定申告をするなら、20万円以下の所得も申告に含めます。
- 所得税の確定申告が不要でも、住民税の申告が必要になる場合があります。
情報確認日:2026年8月9日
対象:日本全国の所得税に関する一般的な制度。住民税の手続きは自治体によって異なるため、お住まいの市区町村で確認してください。
会社員でも確定申告が必要になる主なケース
国税庁の「給与所得者で確定申告が必要な人」では、主に次のケースが示されています。
1. 給与の年間収入金額が2,000万円を超える
1年間の給与収入が2,000万円を超える人は、勤務先で年末調整の対象にならないため、原則として確定申告が必要です。ここでいう2,000万円は、手取り額や給与所得ではなく、源泉徴収票の「支払金額」で確認します。
2. 1社勤務で、給与以外の所得が20万円を超える
給与を1か所から受け取り、その給与の全部が源泉徴収の対象となっている人は、給与所得・退職所得以外の所得金額の合計が20万円を超えると、原則として確定申告が必要です。
対象になり得るものには、副業の業務収入、原稿料、フリマ販売のうち課税対象となる利益、暗号資産取引などがあります。ただし、所得区分や課税関係は取引内容によって変わります。
3. 2か所以上から給与を受け取っている
2か所以上から給与を受け取り、その全部が源泉徴収の対象となっている人は、年末調整されなかった給与の収入金額と、給与所得・退職所得以外の所得金額の合計が20万円を超えると、原則として確定申告が必要です。
国税庁は一定の例外も示しています。給与収入から所定の所得控除を差し引いた残額が150万円以下で、給与所得・退職所得以外の所得が20万円以下の場合など、個別の計算が必要です。複数の源泉徴収票がある人は、自己判断で省略せず、国税庁の申告書作成コーナーで確認するのが確実です。
4. そのほか国税庁が示すケース
- 同族会社の役員やその親族などで、会社から貸付金の利子や資産の賃貸料などを受け取っている
- 災害減免法により、源泉徴収税額の徴収猶予や還付を受けた
- 在日外国公館や国外の会社など、源泉徴収義務のない者から給与の支払いを受けた
- 退職所得について、正規の方法で計算した税額が源泉徴収された税額より多い
これらは該当者が限られるケースです。契約や支払元が特殊な場合は、税務署または税理士へ個別に確認してください。
「20万円ルール」は売上ではなく所得で判定する
副業についてよく聞く「20万円」は、原則として収入(売上)ではなく所得で判定します。業務に係る雑所得の場合、基本的な計算は次のとおりです。
所得 = 総収入金額 − 必要経費
たとえば副業の売上が50万円、必要経費が28万円なら、所得は22万円です。この例では20万円を超えるため、ほかの条件を満たす会社員は原則として確定申告が必要です。
一方、生活用の古着や家財などをフリマアプリで売った収入は、通常は非課税となることがあります。貴金属や美術品など、1個または1組の価額が30万円を超えるものは扱いが異なるため、単純に「フリマの利益はすべて20万円判定」とは考えないようにしましょう。
医療費控除などで申告するなら、20万円以下の所得も記載する
20万円以下なら申告しなくてよいという扱いは、確定申告をする必要がない人に設けられた特例です。医療費控除や住宅ローン控除の初年度などで還付申告をする場合は、20万円以下の給与以外の所得も含めて申告します。
所得税の申告が不要でも、住民税は別に確認する
所得税と住民税では申告の扱いが異なります。たとえば横浜市は、給与以外の所得が20万円以下で所得税の確定申告をしない場合でも、住民税の申告が必要になると案内しています。手続きや期限は自治体によって異なるため、お住まいの市区町村の案内を確認してください。
確定申告が不要でも、申告すると税金が戻ることがある
確定申告の義務がない会社員でも、源泉徴収された税金が本来の税額より多い場合は、還付申告によって払い過ぎた税金が戻ることがあります。
- 年の途中で退職し、再就職せず年末調整を受けていない
- 一定額以上の医療費を支払い、医療費控除を受ける
- 住宅ローン控除を初めて受ける
- 寄附金控除の対象となる寄附をした
- 災害や盗難などの損害について雑損控除を受ける
還付申告は、原則として還付を受ける年分の翌年1月1日から5年間提出できます。控除ごとに要件や必要書類があるため、国税庁の案内を確認してください。
会社員が申告の要否を確認する5ステップ
- すべての源泉徴収票をそろえる:給与の支払金額、源泉徴収税額、年末調整の有無を確認します。
- 給与収入と勤務先の数を確認する:2,000万円超か、2か所以上から給与を受け取っているかを確認します。
- 給与以外の所得を集計する:売上だけでなく、必要経費を差し引いた所得を所得区分ごとに計算します。
- 利用できる控除を確認する:医療費、住宅ローン、寄附、災害など、還付申告につながる項目も確認します。
- 国税庁の申告書作成コーナーで判定・試算する:入力内容に応じて税額や必要な付表が自動計算されます。不明点が残る場合は、税務署や税理士へ相談します。
申告期限と提出方法
所得税の確定申告期間は、原則として対象年の翌年2月16日から3月15日までです。期限日が土日・祝日などに当たる場合は翌開庁日になることがあります。年によって日付や案内が変わるため、提出前に国税庁の最新情報を確認してください。
申告書はe-Taxで送信するほか、所轄税務署への郵送・持参などで提出できます。自宅から作成・送信できる国税庁の確定申告書等作成コーナーを利用すると、入力内容から税額を計算できます。
よくある質問
副業の売上が20万円を超えたら、必ず確定申告が必要ですか?
必ずとは限りません。20万円の判定は、多くの場合、売上から必要経費を差し引いた「所得」で行います。ただし所得区分や勤務先の数、ほかの所得の有無で結論が変わります。
副業所得が20万円以下なら、住民税の申告も不要ですか?
所得税の確定申告が不要でも、住民税の申告が必要になる場合があります。お住まいの市区町村の税務担当窓口で確認してください。
年末調整を受けたら確定申告はできませんか?
年末調整後でも確定申告はできます。医療費控除や住宅ローン控除の初年度など、年末調整では扱えない控除を受ける場合は確定申告を行います。
申告が必要か判断できない場合はどうすればよいですか?
源泉徴収票や副業の収入・経費が分かる資料をそろえ、国税庁の確定申告書等作成コーナーで入力・試算してください。個別事情が複雑な場合は、所轄税務署または税理士へ相談しましょう。
まとめ
会社員でも、給与収入が2,000万円を超える、副業などの所得が20万円を超える、2か所以上から給与を受け取っているといった場合は、確定申告が必要になることがあります。20万円以下でも、還付申告をするならその所得を含めること、住民税は別途確認が必要なことが重要です。
まずは源泉徴収票と給与以外の収入・経費をそろえ、国税庁の作成コーナーで確認しましょう。shu-noteでは、判断を整理できる「確定申告要否チェッカー」も今後公開予定です。
参照した一次情報
本記事は一般的な制度の説明を目的としており、個別の税務判断を行うものではありません。制度改正や個別事情により扱いが異なる場合があります。